
飲食店やホテル、学校や病院などで、調理のスペシャリストとして活躍している調理師。
食品の調理技術の発達を図り、国民の食生活の向上に資することを目的とする日本独自の国家資格で、各都道府県知事により認定・登録されます。
飲食業界でのキャリア形成やスキルアップをめざしたい方は取得しておきたい資格ですが、調理師免許は調理の実務経験がなくても取得できるのでしょうか。
詳しく解説していきます。
目次
実務経験なしだと調理師免許は取得できない?
調理師免許を取得するには、以下2つのルートがあります。
- 調理師養成学校を卒業する
- 2年以上の調理業務経験を積んだうえで調理師試験に合格する
いずれのルートでも、各都道府県知事に申請して免許を受けます。
現段階で調理の実務経験がなくても、上の2つの方法で調理師免許の取得が可能です。
2つの方法を詳しくみていきましょう。
1. 調理師養成施設を卒業する
各都道府県知事により指定された調理師養成施設に1年以上通い課程を修了することで、調理業務の実務経験がなくても調理師免許を取得できます。
この場合、調理師試験を受ける必要はありません。
卒業と同時に調理師免許を申請でき、調理師を名乗ることができます。
調理師養成施設は主に専門学校で、学校によって1~3年と修業年数の異なるコースが設けられています。
調理師専門学校では、最短1年で調理師免許を取得できます。
2. これから実務経験を積み、調理師試験に合格する
調理師専門学校に通学しない場合には、調理師試験を受けなければなりません。
調理師試験では、受験資格として調理に関わる職場での2年以上の実務経験が求められます。
飲食店や給食センターなど調理に関わる職場で、週に4回以上かつ1日6時間以上の勤務を2年以上継続した実務経験を積み、職場から勤務実績の証明書を発行してもらう必要があるのです。
調理師試験は、都道府県ごとに1年に1回程度実施されています。
市販されているテキストや通信教育を利用し、働いて実務経験を積みながら独学で勉強を進めることになります。
実務経験と認められる店舗・働き方とは?
ここからは、調理師試験の受験資格として認められる実務経験とはどういったものなのか、詳しく解説していきます。
施設や期間、働き方などを具体的に紹介するので、自分の経歴を振り返る際や、これから職場を決定する際に参考にしてください。
実務経験として認められる施設
調理師試験の受験資格を得るためには、調理に関わる仕事を、週4回以上かつ1日6時間以上、2年以上継続した実務経験を積む必要があります。
飲食を取り扱う店舗や施設は多くの種類が存在しますが、調理師試験受験に必要な実務経験として認められる職場・施設は調理師法施行規則第4条によって定められています。
調理師法施行規則に記載のない施設で条件の期間以上働いても、調理師試験の受験資格を得ることはできないため、注意が必要です。
具体的な施設・店舗の詳細は、次の項でご紹介します。
実務経験は複数店舗の合算でもOK
実務経験として必要な条件期間について上述しましたが、1ヵ所の職場のみで2年以上勤続しなければならないわけではありません。
2ヵ所以上、複数の職場で調理業務に従事していた場合、それぞれの期間を合算して2年以上となれば受験資格を得られます。
また、受験申請時点で調理業務に従事していなくても、過去に受験資格の条件を満たす調理業務の実績があれば、実務経験として申請が可能です。
実務経験を証明するためには、雇用されている法人または施設の代表者に調理業務従事証明書を記入してもらう必要があります。
期間を合算して申請したい場合は複数の施設代表者に、過去の実務経験を申請したい場合は過去に雇われていた施設代表者に、それぞれ記載をお願いしましょう。
パート・アルバイトでもOK
調理師試験の受験資格に係る調理業務従事の認定という文書において、厚生労働省は、パート・アルバイトで調理業務に従事している場合について、以下のように述べています。
原則として、週四日以上かつ一日六時間以上勤務している場合を除き、調理の業務に従事しているものとは認められない。
引用元:調理師試験の受験資格に係る調理業務従事の認定について
つまり、調理に関わる職場であり条件期間を満たしていれば、雇用形態の縛りはなく、正規職員はもちろんパート・アルバイトでも、調理業務の実務経験として認められるということです。
しかし、実務経験として認められるのは直接調理業務に従事している場合のみです。
接客業務や食洗器洗浄、運搬・配達業務などは、雇用形態に関わらず調理師試験の受験資格としては認められないため、注意が必要です。
調理師免許の実務経験として認められる店舗一覧
調理師資格の実務経験として認められる職場・施設は、調理師法施行規則第、ならびに食品衛生法施行令によって定められています。
施設 | 備考 |
飲食店営業 | 旅館・簡易宿泊所を含む 喫茶店営業を除く |
魚介類販売業 | 販売のみは除く |
そうざい製造業 複合型そうざい製造業 |
煮物(佃煮を含む)、焼物(炒め物を含む)、揚げ物、蒸し物、酢の物または和え物およびこれらの食品に米飯やパンを組み合わせた食品を製造する営業 |
寄宿舎、学校、病院などの給食施設 | 継続して1回20食以上または1日50食以上飲食物を調理して供与する施設 |
飲食店営業
チェーン展開されている飲食店や、個人経営の居酒屋、食堂などが飲食店営業に含まれます。
また、旅館や簡易宿泊所での調理業務も、飲食店での実務経験として認められます。
ただし、カフェ、喫茶店での勤務実績を実務経験として申請したい場合には注意が必要です。
飲食店営業許可を取得しているカフェであれば問題ありませんが、喫茶店営業許可のもと営業している喫茶店での勤務は調理の実務経験として認められません。
自分が働いている店舗が飲食店営業許可・喫茶店営業許可どちらのもとで営業されているのか、経営者に確認しましょう。
魚介類販売業
魚介類販売業とは、店舗を設け、鮮魚介類を販売する営業のことで、鮮魚店やスーパーの鮮魚売り場などのことを指します。
刺身を調理・販売する行為は魚介類販売業の範疇に含まれるとして、店舗での勤務経験は調理師試験の受験資格として認められます。
しかし、魚介類を販売するのみでおろしたり加工したりしない場合には、調理の実務経験として認められないため注意しましょう。
そうざい製造業・複合型そうざい製造業
そうざい製造業とは、煮物や焼物、蒸し物、揚げ物、酢の物、和え物を製造する営業のことです。
複合型そうざい製造業は、これらの食品に米飯やパンを組み合わせた食品を製造する営業のことを言います。
具体的には、スーパーのそうざいコーナーや、作った弁当を卸売する店舗のことを指し、このような店舗での実務経験も調理師試験の受験資格として認められます。
しかし食肉製品製造、魚肉ねり製品製造業、豆腐製造業は除かれるので気をつけましょう。
寄宿舎、学校、病院などの給食施設
寄宿舎、学校、病院など、給食施設での調理経験も調理の実務経験として認められます。
しかし、継続して1回20食以上、または1日50食以上の飲食物を調理し供与する施設と、規模の規定があります。
小規模な施設で1回20食未満、1日50食未満の供与である場合には、調理の実務経験として申請できません。
実務経験なしからでも調理師免許の取得はめざせる
現時点で調理の実務経験がなくても、調理師養成校に通うか、今から実務経験を積むか、などの方法で調理師免許の取得をめざすことは可能です。
調理師試験の受験条件として求められる実務経験には、期間や職場などに細かな条件が定められています。
そのため、受験資格として申請できるものかどうか、事前にしっかりと確認する必要があります。
調理師免許を取得するまでにはさまざまなルートが考えられるため、自分のライフスタイルやキャリア形成に合ったものを選択しましょう。