医療機関での的確な診断・治療のために必要不可欠である臨床検査。
これを担う、検査の専門家が臨床検査技師です。
臨床検査技師は、血液や髄液、尿や組織の一部といった検体(検査の材料)に適切な処理・分析を行い、検査結果を導き出していきます。
患者さんの診断・治療のための検査材料は、多くの場合血液です。
検体を扱う臨床検査技師は、採血自体を行うことはできるのでしょうか?
以下に解説していきます。
目次
臨床検査技師は採血できる
外来受診や入院してきた患者さんに対しては看護師が採血を行い、検体を検査部に送って臨床検査技師が検査処理するというイメージから、「臨床検査技師は採血できないのでは」と思われる方もいらっしゃるしれません。
しかし実は、検体を扱う臨床検査技師自らも、採血を行うことが可能なのです。
この項では、臨床検査技師の採血業務を解説していきます。
臨床検査技師が採血可能となった背景とは
臨床検査技師は、医療の進歩や検査の高度化、医療現場における分業化などの流れとともに、その名称と業務内容を変化させてきた職業です。
かつては衛生検査技師という名称で、検体検査のみでした。
昭和45年に国家資格者としての臨床検査技師が定義され、従来衛生検査技師が担ってきた検体検査に加えて、生理学的検査と採血が実施できるようになりました。
以前は臨床検査技師が採取できる血液量は19ミリリットル以下とされてきましたが、平成19年に厚生労働省から20ミリリットル以上の採血も可能との解釈が示され、現在は20ミリリットルを超える採血も可能となっています。
採取した血液は、温度や採取量などに注意して正しく取り扱わなくては、検体として使用することができません。
質の良い検体を得るためには、採血できる部位をはじめ検査方法を熟知した臨床検査技師が行なうことが重要になります。
臨床検査技師の採血できる部位
臨床検査技師等に関する法律施行令では、第八条に臨床検査技師の採血実施部位が明記されています。
臨床検査技師が患者さんから採血を行うことができる部位は以下に限られており、この他の場所から血液を採取することはできません。
- 耳朶、手指、足趾の毛細血管
- 肘静脈、手背、足背、四肢の表在静脈
また、臨床検査技師が患者さんに対して採血を行う場合には、医師または歯科医師による、採血の方法、部位、採血量などの具体的指示が必要です。
採血の手順や使用する物品、合併症の予防法など、エビデンスに基づく具体的なガイドラインは、日本臨床検査標準協会(JCCLS)から標準採血法ガイドライン改訂版(GP4-A3)が示されています。
実際に臨床検査技師になってからの採血方法やその他検査についてさらに知っておきたい方は、ぜひご参照ください。
臨床検査技師の採血・血液に関わる仕事内容
臨床検査技師が行う検査業務は、大きく分けて2種類です。
一つは生理学的検査で、臨床検査技師が患者さんに直に接して実施します。
心電図検査や聴覚検査、脳波検査、呼吸機能検査などが生理学的検査の一部です。
もう一つは検体検査です。
患者さんとは接触せず、検査の材料である検体を対象に行います。
分析対象になる検体は、尿・糞便等一般検査では尿と便、病理学的検査では手術などにより体内から採取した細胞です。
血液も検体であり、広義の血液検査は検体検査に含まれます。
血液を対象とする検査のなかにも、生化学的検査、血液学的検査、免疫学的検査といった分類があり、それぞれ異なる検査項目や分析方法です。
臨床検査技師だけど採血したくない場合の対処策
臨床検査技師の仕事に血液の取り扱いはつきものであり、臨床検査技師が自ら採血を行う場合もあります。
しかし、必ずしもすべての臨床検査技師が日常的に採血を実施しているというわけではありません。
規模の小さいクリニックや健診センターなどでは、臨床検査技師が検査全般を担当する場合が多く、採血をする機会も多くなる傾向にあります。
反対に総合病院など規模の大きい病院や、クリニックや病院から外注として検体が送られてくる検査センターであれば、臨床検査技師が採血を行う頻度は低くなります。
- 採血は看護師が行うものだと思っていた
- 臨床検査技師に採血行為が必要だと思っていなかった
- 患者さんに痛みを与える採血行為を行いたくない
- 針を取り扱うことに恐怖心がある
臨床検査技師をめざしていても、上記のように採血行為を避けたい方もいるかもしれません。
臨床検査技師が採血を行わなくても良い職場を探したいときには、求人情報に採血行為の有無が記載されているかを確認したり、直接問い合わせてみましょう。
臨床検査技師の就職先を詳しく知りたい方は、下記リンクもご覧ください。
臨床検査技師になるなら採血の仕事もあると理解しておこう
臨床検査のスペシャリストとして、大切な検体を適切に取り扱い、分析・評価する役割を担う臨床検査技師。
患者さんに直接接する機会もあり、時には採血などで検体採取に関わることもあります。
臨床検査技師の業務に採血行為が含まれることを意外だと感じる方もいるかもしれません。
しかし、検査を熟知する臨床検査技師自身が質の良い検体を採取するために採血を行うことは、大きな意義を持つことも事実です。
職場によっては臨床検査技師に採血行為が求められる場合もあることは、あらかじめ認識しておきましょう。