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「臨床検査技師に将来性がない」は本当?現在の状況とは

東北大学病院生理検査センターの調査では、20年後に臨床検査技師の仕事がなくなる確率は90%といわれています
このような数字を見ると「このまま臨床検査技師を続けても大丈夫だろうか」「これから臨床検査技師をめざすのはやめたほうが賢明では」といった不安を感じる方も多いと思います。

結論からいうと、臨床検査技師そのものが消滅するとは考えにくいでしょう。
この記事では臨床検査技師の将来性に不安を感じている方に向けて、現状から臨床検査技師の必要性をひも解いてお伝えします。今後の判断材料になれば幸いです。

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臨床検査技師業務の現状を確認

2022年の現在、臨床検査技師が医療機関で実施している検体検査業務は次のとおりです。

尿・便などの一般検査 成分を調べて腎臓や肝臓の異常を検出したり、消化器の異常をチェックしたりします。
血液学的検査 赤血球や血色素から貧血の程度を、白血球の多さから炎症の程度などを把握します。
生化学的検査 血液中の糖質、蛋白質、ビタミン、ホルモンなどを調べ、臓器の異常を把握します。
免疫血清学的検査 免疫機能の状態を調べることで、身体に侵入した細菌やウイルスを特定します。
微生物学的検査 採取した検体を培養し、病気を引き起こす細菌などの微生物を検出します。
輸血・臓器移植関連検査 輸血のための血液型検査や交叉適合検査、臓器移植のための臓器適合検査があります。
遺伝子検査 遺伝子を調べてDNAの異常を検出します。
病理学的検査 身体の臓器や、その組織の一部あるいは細胞を顕微鏡によって観察し、悪性細胞などを見つけます。

出典:臨床検査AtoZ(日本衛生検査所協会)

臨床検査技師が担当する検体検査業務は、一部の領域を除いて急速に機械化(AI化)が進んでいます。

検体系技師が担当する業務内容は、多くの作業を現場技師の手で行っていた時代に比べて大幅に削減されました。
また、これまではバラバラだった各領域の検査機器が1つの搬送ラインに接続できるようになり、検体の搬送・遠心・測定・保管業務が機械により一元管理化されつつあります。

機械化にともない、技師の業務内容が削減される他にも、迅速化や再現性向上など臨床へのメリットも大きく、今後もさらに機械化が進行すると予想されます。
そのため、コスト削減を理由に臨床検査技師を置かない医療機関も見受けられます。

臨床検査技師の将来性が不安視されている理由

臨床検査技師の将来性が不安視されている理由

臨床検査技師が20年後に消えるといわれる理由は、AIの進化と普及に伴い検体検査業務が減少するためです。
臨床検査業務への影響は、主に次の3つです。

マニュアル作業のオートメーション化

検体検査業務は、一昔前であれば試薬の調整から測定まで現場技師の手(用手法)で行っていました。
作業内容が細かく煩雑なため、臨床検査技師は医療機関に必要不可欠な存在でした。

ところが、医療機器メーカーの企業努力により、生化学検査・免疫検査などを筆頭に現在ではほぼすべての検査工程が機械化されています。

その結果、プロセスの効率が上がり、さまざまな意思決定を迅速に行えるようになりました。

デジタル化にともなう情報の流れの自動化

一昔前は、依頼情報や検査結果のやりとりを紙ベースで行っていましたが、現在は医療機関のオーダリングシステム内でデジタル化されています。

また、これまでは測定結果の承認作業は技師のみができる業務の位置付けでした。
しかし、測定結果の判定フローを構築して、AIに判断させるシステム開発も進んでいます。

現在、すでに検査業務の半数以上はAIに置き換わっています。

医療の品質向上

検査における作業・判断は、人によって相違を発生させる可能性があります。
そのため、誰が検査業務を行うかで最終的な成果物の内容が異なることが指摘されています。

たとえばベテラン技師と新人技師では、知識や経験の量が異なり、結果における判断基準や取捨選択にも違いが出ます。

本来、検査業務は誰が行っても同じ結果が得られるように標準化されているべきですが、ヒトの手が加わると、差が出てしまうケースも否定できません。

AI化による検査の標準化は、医療の品質向上につながります。
医療機関や患者さんに大きなメリットをもたらすため、今後もさらにAI化は進んでいくでしょう。

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臨床検査技師は検体検査以外でも必要性がある

臨床検査技師が行う業務は、検体検査以外にも多岐にわたっており、すべての業務がAIに代替されることは現時点で考えられません。

特に以下3つの業務はAI化があまり進んでいないため、技師の技量が成果に直結します。

生理学的検査

生理学的検査はヒトの身体を直接調べるものです。具体的には次の7つの検査が該当します。

心臓系検査 心電図、心音図、脈波などを調べ、 心筋梗塞や心不全などの診断に利用します。
脳波検査 頭皮に電極を装着し、α波やβ波などの電気的信号を脳波計で記録して脳神経などを調べます。
眼底写真検査 眼底カメラで網膜を撮影し、動脈硬化や糖尿病などで血管系に起こる変化を調べます。
呼吸機能検査 肺活量など呼吸器の機能測定を行い、レントゲンではわからない肺や気管、気管支の状態を調べます。
超音波検査 身体に超音波を当て、 その反射波によって臓器や胎児の状態を調べます。
磁気共鳴画像検査 身体に磁気を当て、共鳴エネルギーを画像にして異常の有無を調べます。
熱画像検査 身体の表面温度をカラー画像化し、 熱分布を調べて患部などを把握します。

出典:臨床検査AtoZ(日本衛生検査所協会)

身体の構造は個人により微妙に異なるため、すべての患者さんを同じ手技で検査するだけでは正確な結果は得られません。

個人による微妙な調整は、AIへの代替が技術的にも難しく、生理学的検査の担当技師はAI化の影響を受けにくいでしょう。

チーム医療への参画

臨床検査技師は、検査業務以外にもさまざまな医療職種と連携して医療の質を高めるチーム医療にも参画しています。

臨床検査技師が参画する主なチーム医療は以下の2つです。

ICT(感染対策チーム) ・薬剤師と連携して適切な抗生物質を選択
・抗生剤の使用状況と薬剤耐性菌情報の収集と提供
・微生物検査の検査スケジュールの可視化
NST(栄養サポートチーム) ・低栄養状態を予測するデータの提供
・褥瘡状態を予測するデータの提供

いずれの業務も検査結果を判読できる検査技師ならではのポジションが確立されており、医師・薬剤師・看護師と協働して医療の品質向上に貢献します。

治療方針は各種データに基づいて行われるので、多職種によるディスカッションが欠かせません。チーム医療もAIでは代替できない業務の一つです。

医療機関以外にも活躍の場がある

臨床検査技師が活躍できる職場は医療機関だけではありません。

病院/医院 検査センター
検診センター 医療機器メーカー
試薬メーカー 治験関連企業
食品関連企業 教育/研究機関

上記のとおり、医療業界を中心に幅広い分野で活躍の場があります。
臨床検査技師のニーズは今後もゼロにはならないでしょう。

ただし、いずれも臨床検査技師の独占業務ではありません。
臨床検査技師以外の医療資格保持者であれば代替できることは念頭に置いてください。

臨床検査技師の需要は増加している

臨床検査技師は検査室の外にも活躍の場が広がっています。直近のトピックスとしては次の3つがあげられます。

新型コロナウイルスワクチン接種の打ち手

以下のニュースで発表されたとおり、昨今の新型コロナ感染拡大の影響を受けて、臨床検査技師でも被験者から同意が得られればワクチンの接種が可能となりました。
今回に限らず、感染症の流行は今後も起きる可能性があります。ワクチン接種が行える医療従事者としての臨床検査技師の存在は大きいといえるでしょう。

予防医療の普及にともなう臨床検査技師のプレゼンス向上

検査結果をもとにした最終的な診断は医師が行い、臨床検査技師は行えません。
しかし、疾患・病態と検査データの関連付けて理解する能力は、他の医療職従事者に比べて優れているといえます。

今後の法整備などが進めば、生活指導や予防医学など、この能力を臨床以外でも活かせる場が拡がるかもしれません。

タスクシフト・シェアにともなう臨床検査技師の業務範囲拡大

第204回通常国会において、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(令和3年法律第49号)が成立し、臨床検査技師などに関する法律も一部改正されました。

これにより、これまでは医師が行っていた採血や検体採取、生理学的検査に関連する行為などを臨床検査技師も行えるようになっています。

これらの業務は医師または歯科医師の具体的な指示を受けて行う場合に限られ、単独では行えません。とはいえ、検査に必要な業務を一貫して担えるようになったことにより、検査の専門家としての臨床検査技師の存在感が高まり、業務の効率化と医師の負担軽減も期待できます。

臨床検査技師は今後も活躍の場は十分ある

臨床検査技師の検体検査業務の機械化は今後も進み、AIに置き換わっていくと推測されています。
とはいえ、臨床検査技師は検体検査業務以外にも活躍の場があるため、仕事そのものが消滅するとは考えられません。

最近ではワクチン接種の打ち手、予防医学への参画、タスクシフト/シェアなどにより臨床検査技師の活躍の場は広がっています。
臨床検査技師の将来性について過度に心配する必要はないといえますが、今後の動向は注視しておきましょう。

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