
理学療法士は、けがや病気などで身体機能が低下した人に運動療法・物理療法を行い、基本的な動作能力の回復を助ける専門職です。
病院やリハビリテーション施設に限らず、スポーツの現場など幅広い場面で活躍しています。
理学療法士に興味を持った方は、どのようにすればなれるのか気になるところでしょう。
本記事では、理学療法士になるために必要な資格や養成校について解説します。

目次
理学療法士になるには国家資格が必要
理学療法士は、医師からの指示を受けて医療の補助として理学療法を行う技術者です。
理学療法士として理学療法を行うためには、国家資格が求められます。
そのため、理学療法士になるには、国家試験に合格しなければなりません。
試験に合格すると、「理学療法士及び作業療法士法」に基づいて厚生労働大臣から免許が与えられます。
元々理学療法は、マッサージや電気療法などの物理的療法という扱いでした。
1960年から厚生労働省が発行する「厚生白書」でその重要性がうたわれ、1965年に「理学療法を行う専門の職能」として国家資格となりました。
国家試験を受けるには以下で説明する養成校に通う必要があります。
理学療法士になるための資格を得るには
理学療法士になるには、一般的に養成校で3年以上学ぶことが必要です。
すでに作業療法士の資格を持っている場合は、学びの期間は2年以上に短縮されます。
また、海外の学校を卒業している場合は一定の手続きをすることで、受験資格を得られる場合もあります。
養成校に3年以上通う
理学療法士国家試験の受験資格を得るためには、養成校で3年以上の教育課程を修了する必要があります。
養成校は以下の4種類です。
- 大学(4年制)
- 短期大学(3年制)
- 専門学校(3年制・4年制)
- 特別支援学校(視覚障がい者が対象)
すでに作業療法士の資格を取得している人は、養成校で2年以上学べば理学療法士の受験資格を得られます。
なお、外国の養成校を卒業または理学療法士免許を取得している人は、定められた手続きをすることで、養成校への進学免除や不足している単位の取得のみで良い場合もあります。
学校では「一般教養」「専門基礎科目」「専門科目」「臨床実習」を行うことが必要です。
養成校それぞれにカリキュラムの特徴があるので、以下で解説します。
具体的な授業内容や実習についてはこちらの記事で解説しています。
大学(4年制)
一部の専門学校や短期大学では3年間で課程を修了しなければなりませんが、4年制大学では理学療法の基礎から詳論まで十分に時間をかけて、幅広く学ぶことができます。
また、学校に病院や施設が附属している場合もあり、演習や臨床実習を行うことで学生時代から実践的な経験を積むことができます。
卒業後の進路は臨床への就職に限定されず、大学院や研究機関へ進む道がひらかれているのも、4年制大学の魅力です。
大学の教員は現役の研究者ですので、研究や論文の執筆などのノウハウを学べます。
理学療法の知識や技術をじっくり学びたい、深く究めたいという方に向いているでしょう。
理学療法士国家試験の受験資格を得ることができる養成校のうち、4年制大学の割合は約40%(総数261校・大学106校)です。
就職先にもよりますが、大卒の初任給は専門学校卒に比べて高く設定されていることが多くなります。
短期大学(3年制)
短期大学は医療系大学に附属している場合が多く、専門学校より大学に近い環境で講義や実習を受けられます。
修了年限も3年間と大学より1年早く卒業でき、その分学費が安く抑えられるのも魅力です。
しかし、大学であれば4年間かけて修了する課程を3年間に詰め込んでいるため、授業や課題で忙しい学生生活になってしまう可能性があります。
また、理学療法士国家試験の受験資格を得られる短期大学は全国で10校以下と、かなり少ないのが現状です。
専門学校(3年制、4年制)
専門学校は、より実践的な職業訓練が受けられる養成校です。
働きながら資格を取得できる、夜間制の学校もあります。
3年制と4年制でカリキュラム自体に大きな差はありませんが、3年制では短期間で教養から実習までを集中して行う必要があります。
早く資格を取りたい人や学費を抑えたい人は3年制、じっくりと学びたい人は4年制が良いでしょう。
特別支援学校(視覚障がい者が対象)
視覚障がいをもちながら理学療法士をめざす人は、高校卒業後に理学療法科を設置している特別支援学校で3年間の教育課程を修了すれば、理学療法士国家試験の受験資格を得ることができます。
特別支援学校は、視覚障がいがある人にあわせたカリキュラムがあり、少人数のクラスで教職員から個別的に学べる環境が整っています。
卒業後には、病院や施設、教育機関など、さまざまな場所で活躍できるでしょう。
国家試験を受ける
以上のようなルートを経て理学療法士国家試験の受験資格を得られたら、いよいよ国家試験に挑みます。
試験は1問1点の一般問題と、1問3点の事例・症例が問われる実地問題からなります。
時間は2時間40分で、形式は五肢択一か五肢択二の選択問題です。
実地問題の得点と総得点の両方で合格基準を超えていれば合格となります。
試験問題は以下のとおりです。
一般問題 | 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。)、臨床医学大要(人間発達学を含む。)および理学療法 |
実地問題 | 運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)および理学療法 |
試験の詳細は理学療法士国家試験の施行|厚生労働省を確認してください。
理学療法士をめざすにあたってよくある疑問
理学療法士をめざす際によくある疑問に、Q&A形式で答えます。
養成校の期間や、働きながらの学習、理学療法士への道のりの難易度について、理解が深まるでしょう。
最短で理学療法士になるには何年必要?
高校卒業後、理学療法士になるために必要な期間は最短で3年間です。
短期大学か3年制の専門学校を選ぶのが、一番早く理学療法士になるルートです。
しかし、4年制の大学や専門学校に通えば、学士や高度専門士が取得できるなどのメリットがあります。
大学院に進学する場合は、3年制の専門学校では難しいので注意が必要です。
通学する養成校は、何年制かだけでなく、学校の所在地や学費などもよく調べてから決めましょう。
また、大学では教員がそれぞれの専門としている分野の研究を行っています。
ホームページなどで研究している内容を調べて、将来自分の関わりたい分野の研究をしている教員がいる大学を選ぶのも一つの方法です。
社会人が働きながら理学療法士になることはできる?
養成校には夜間部を設けている学校もあるため、働きながら理学療法士をめざすことは可能です。
夜間部がある学校や学費についてなど、詳しくは以下の記事で解説しています。
理学療法士になるのは難しい?
直近3年の国家試験受験者数・合格率は以下のとおりです。
57回(令和4年) | 58回(令和5年) | 59回(令和6年) | |
受験者数(全体) | 12,685人 | 12,948人 | 12,629人 |
合格者数(全体) | 10,096人 | 11,312人 | 11,266人 |
合格率(全体) | 79.6% | 87.4% | 89.2% |
新卒者のみの合格率 | 88.1% | 94.9% | 95.2% |
おおよそ8〜9割程度の合格率ですが、試験が簡単というわけではないのでしっかりと勉強して挑むことが必要です。
また、国家試験の前に養成校への受験を突破する必要があり、大学・専門学校・短大などの養成校ごとに受験の難易度は異なります。
理学療法士になるには最低3年間の養成学校に通って国家試験に合格する必要がある
理学療法士として働き始めるまでの、具体的なルートがイメージできたでしょうか。
理学療法士は患者さんと一対一で接する機会が多く、運動機能を回復したいという目標を患者さんと共有し、ともに困難を乗り越えていく、とてもやりがいのある仕事です。
自分のキャリア形成や、なりたい理学療法士像を明確にしたうえで、養成校の情報を収集していきましょう。