栄養士の仕事に興味を持ち、資格を取得したいと考える方もいるでしょう。
栄養士の資格を取得するためには養成施設へ通う必要がありますが、現在は社会人として働いており、学校へ通うのが難しいケースもあるかもしれません。
この記事では、独学で栄養士の資格取得をめざす方法があるのか 、難しい場合は栄養士に似た資格で独学での取得をめざせるものがあるのかについて解説します。
目次
栄養士の資格は独学では取れない
栄養学や食品学の教科書は、書店やインターネットでもたくさん売られています。
それらを買って勉強し、試験に合格すれば栄養士になれる、と思う方もいるかもしれません。
しかし、栄養士資格は独学で取ることはできません。
栄養士は、栄養士法という法律で定められた国家資格です。
栄養士法第二条第一項には次のような記載があります。
厚生労働大臣の指定した栄養士の養成施設において2年以上栄養士として必要な知識及び 技能を修得し、都道府県知事の免許を受ける
要するに、栄養士の資格を取るには、指定された施設で2年以上学ぶ必要があると法律で決められているのです。
なお、栄養士法第一条には以下のように書かれています。
栄養士とは、都道府県知事の免許を受けて、栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者をいう
引用元:栄養士法第一条
つまり、栄養士免許がないと栄養士と名乗れないということ。
逆にいえば、栄養士と名乗らずに、栄養の指導をすることは認められているわけです。
このような資格を名称独占資格といい、医師や看護師のように資格がなければ仕事ができない業務独占資格とは区別されています。
独学で栄養士の資格を取得できるのか、という疑問についてまとめると以下となります。
- 栄養士の資格は指定の施設で2年以上学ぶ必要があり、独学での取得は不可能
- 資格がないと「栄養士」と名乗って働くことはできない
- ただし、「栄養士」と名乗らず栄養の指導自体は一応できる
管理栄養士は独学で勉強して取る人もいる
栄養士と混同されやすい資格として管理栄養士があります。
「独学で管理栄養士を取得した」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、管理栄養士の資格を取れるのは栄養士の資格を持っている人だけです。
管理栄養士も栄養士法で定められており、栄養士だけが受験できる管理栄養士国家試験に合格する必要があります。
つまり、独学で管理栄養士を取得した人は、もともと栄養士の資格を持ったうえで勉強したということ。
栄養士の資格を持っていない人には当てはまりません。
栄養士の資格を取るには?
栄養士の資格を取るには、栄養士養成施設か管理栄養士養成施設で最低2年は学ばなければなりません。
栄養士養成施設には2年制・3年制・4年制があり、管理栄養士養成施設は4年制のみです。
これらは大学・短大・専門学校に分類される高等教育機関で、全国に292校( 管理栄養士養成施設153校・栄養士養成施設139校)あります。
栄養士養成施設・管理栄養士養成施設はいずれも夜間部や通信教育課程はなく、昼間の学校に通うしか方法はありません。
どの学校も授業は平日ほぼ毎日ありますし、校内や校外での実習も必修。
他にも必修科目が多くあり、出席確認も厳しいため、フルタイムの仕事を続けながら修了するのは困難でしょう。
なお、栄養士は指定の養成施設を卒業すれば免許がもらえます。
管理栄養士のような国家試験はありません。
2年制の専門学校・短大の学費は?
栄養士の資格を取るためとはいえ、進学を決めるうえで学費は重要な問題です。
あくまでも目安ですが、栄養士養成施設に通った場合には2年制の短大や専門学校で卒業までに230~320万円程度かかるとされています。
社会人向けの学費サポートや給付もありますが、昼間の学校に通うとなれば仕事を続けられなくなる可能性が高いため、学費のほかに生活費を確保しておく必要があるでしょう。
栄養士として必要な知識・技能とは?
学費と生活費の心配がなくなれば学業に専念できますが、2年以上もかけて何を学ぶのかと疑問に思う方もいるかもしれません。
栄養士に必要な知識は、三大栄養素やビタミン、ミネラルなどの働きについてだけではありません。
例えば、栄養学や食品学では栄養素の化学構造から学習します。
また、栄養素が体内で使われることを「代謝」と言いますが、代謝は生体内で起こる化学反応です。
それを理解するには、人体の構造に関する知識が必要になります。
そのうえ、調理を含めた給食管理の技能も身につけなければなりません。
栄養士の主な就職先は給食施設のため、給食管理は校内実習・校外実習を合わせて2単位以上が必修です 。
独学で取れる栄養士に近い資格
主婦や会社員として働いている人にとって、栄養士の資格取得はハードルが高いと感じることでしょう。
将来、栄養士に近い仕事をしたい、またはきちんと栄養を勉強したい方に向けて、独学でも取れる資格がいくつかあるのでご紹介します。
手に職をつけたいなら「調理師」もおすすめ
栄養士の求人は給食施設が中心です。
給食施設での栄養士の仕事は、献立作成、食材の発注、調理、衛生管理、栄養管理などですが、日々の業務の大半は調理や調理補助となります。
就職のために資格を取るのであれば、調理師も選択の一つです。
調理師も栄養士と同様、法律で定められた国家資格です。
病院などの給食施設をはじめ、レストランやホテルなどの求人も多数あります。
調理師の専門学校なら夜間部もあるため、仕事をしながら1~2年で調理師免許を取得できます。
また、飲食店などで2年以上の実務経験があれば、学校に通わなくても取得可能です 。
調理師試験に合格する必要がありますが、市販のテキストや参考書を買って勉強すれば良いでしょう。
自分で計画を立てて勉強する自信がない人は、試験対策の通信講座もあります。
実用的なのは「食生活アドバイザー」
食生活アドバイザーは、食を通じて健康をサポートする、食生活全般のスペシャリスト。
栄養士や調理師と違って民間の資格で、受験資格がないため独学で取得できます。
試験科目は、以下の6つ。
- 栄養と健康
- 食文化と食習慣
- 食品学
- 衛生管理
- 食マーケット
- 社会生活
幅広く学習する必要があるものの、ほとんどは日々の生活に密着した内容なので、自身の生活を見直す機会にもなるでしょう。
また、最近は健康経営が重視 されており、資格取得を推奨する大手企業やスーパーもあります。
合格をめざして勉強することで、栄養士ほど専門的ではないにせよ、人にアドバイスできる「食の教養」が身につきます。
食のプロをめざすなら「フードコーディネーター」
フードコーディネーターは、「テレビや雑誌で撮影用の料理を作る人」というイメージが強いのではないでしょうか。
そうした「食の演出」に関わる仕事もありますが、他にも食品メーカーの商品開発や飲食店のメニュー開発といった「食の開発」に携わる人も多数います。
また、レストランのプロデュース、食育のプログラム開発など「食の運営」で活躍するフードコーディネーターもいます。
これらは経験やセンスが重視される仕事ですが、未経験からチャレンジするなら資格があるほうが有利でしょう。
フードコーディネーターに求められるのは、食に関する基本的な知識だけでなく、フードビジネスの専門的・実践的な知識です。
資格は1級・2級・3級があるので、3級から順に上をめざすと良いでしょう。
1級では企画力やプレゼンテーション能力も審査されます 。
社会人が栄養士をめざすなら学費と生活費の確保を
栄養士は法律で規定された国家資格で、2年以上は昼間の学校に通わなければ取れません。
そのため、フルタイムの仕事を続けながら栄養士課程を修了するのは現実的に難しいでしょう。
本気で「栄養士になる」と決心したなら、まずは学費と生活費の確保をおすすめします。
まだ栄養士として働く決意が固まっていないなら、手始めに独学で取れる栄養関連資格をめざすのも良いでしょう。