生活相談員は、介護施設や病院などで入所または通所介護を受けている人に対し、自立的な生活が送れるよう相談にのったり援助をしたりする仕事です。
生活相談員をめざすにあたり、「必要な資格はあるの?」「誰でも資格を受けられる?」「資格なしでもなれる?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
今回は、生活相談員に必要な資格を説明します。
自治体によって資格要件が異なるため、一般的に資格要件とされることが多いものを紹介し、各資格の受験条件を紹介します。
また、無資格でなれる自治体もあるため、その際に要件とされる実務経験も確認しましょう。
目次
生活相談員として働くのに必要な資格要件
厚生労働省では、生活相談員の資格要件について、社会福祉法第19条第1項を根拠法に定めています。
法律の解釈に基づき、自治体ごとに必要な資格を決定していますが、一般的には社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格といった3種類の資格のいずれかが必要です。
各資格について、取得するためのルートなど詳細を解説します。
社会福祉士
出典元:社会福祉士の資格取得方法
社会福祉士の資格は、福祉や医療に関する相談援助を行う知識・技術があることを証明する国家資格です。
資格を取得するには年1回行われる社会福祉士国家試験に合格する必要があります。
国家試験の受験資格は、福祉系大学・短大または社会福祉士養成施設を卒業し、場合によっては実務経験を要することが条件です。
ここからは、受験資格を得るための詳細を3つのルートに分けて確認しましょう。
福祉系大学
福祉系の大学に通い、社会福祉士の資格取得をめざすにあたり、4年制福祉系大学で指定科目を履修する場合、そのまま国家試験を受験できます。
また、福祉系短大で指定科目を履修して資格取得をめざす場合は、3年制短大であれば実務経験を1年間、2年制短大では2年間の実務経験が必要です。
短期養成施設
短期養成施設などに入学するには要件があり、次のうちいずれかに該当していることが必要です。
- 福祉系大学など(4年)基礎科目履修
- 福祉系短大など(3年)基礎科目履修+実務経験1年
- 福祉系短大など(2年)基礎科目履修+実務経験2年
- 社会福祉主事養成機関+実務経験2年
- 児童福祉司や身体障害者福祉司などで実務経験4年
短期養成施設に入学し、6ヵ月以上履修すると受験資格を得られます。
一般養成施設
一般養成施設などに入学する場合も要件があり、次のいずれかを満たす必要があります。
- 一般大学など(4年)
- 一般短大など(3年)+実務経験1年
- 一般短大など(2年)+実務経験2年
- 相談援助実務(4年)
一般養成施設に入学し、1年以上履修すると、受験資格を得られます。
精神保健福祉士
社会福祉士は幅広い人々の支援が対象ですが、精神保健福祉士は特に精神的な障がいがある人を対象に支援する職業です。
精神保健福祉士の国家試験は年1回実施され、受験資格を得るには下の図にある11パターンのうち、いずれかを満たす必要があります。
福祉系大学で4年間指定科目を履修することが最短ルートです。
他にも、福祉系大学・短大で基礎科目を履修、または相談援助実務経験を積んだのちに短期養成施設などに入学するルートや、一般大学・短大や相談援助実務経験を経て一般養成施設などに入学するルートなどがあります。
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格は、市町村で社会福祉に関する支援活動を行うための資格です。
社会福祉士や精神保健福祉士のような国家資格ではなく、取得するための試験はありません。
取得には指定された5つのルートのうち、いずれかを満たすことが必要です。
大学などで社会福祉に関する科目を3つ以上履修し卒業、特定の通信教育を1年修了、指定養成機関で22科目(合計1,500時間)修了、都道府県などが主催する講習会の受講(19科目279時間)などが取得要件です。
また、社会福祉士や精神保健福祉士などになることでも資格を取得できます。
自治体によって生活相談員の資格要件が異なる
一般的に、生活相談員の資格要件を満たすには、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格のうち、いずれかの資格が必要です。
しかし、自治体によっては、それ以外の資格でも要件を満たせるケースもあります。
同等の資格や実務経験を要件としている自治体
介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)といった資格や実務経験を生活相談員の資格要件としている自治体もあります。
以下で、一部自治体の生活相談員の資格要件を紹介します。
自治体 | 資格要件 (社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格を除く) |
自治体サイト |
千葉県 | ・介護支援専門員 ・介護福祉士 |
千葉県ホームページ |
山形県 | ・介護支援専門員 ・1年以上介護または相談業務に就いている介護福祉士 |
○基準・報酬等に関する取扱いについて |
福島県 | (通所介護のみ) 介護支援専門員、通所・入所系サービス事業所において5年以上実務経験のある介護福祉士 |
生活相談員の要件についてのQ&A |
愛媛県 | ・介護支援専門員 ・常勤職員として2年以上勤務経験のある介護福祉士 |
生活相談員の資格要件について |
札幌市 | ・介護支援専門員 ・介護福祉士 |
札幌市ホームページ |
介護支援専門員
介護支援専門員はケアマネジャーとも呼ばれます。
医療や福祉に関係する幅広い知識と、福祉制度への理解を要する資格です。
介護支援専門員は国家資格ではなく、都道府県ごとに登録・管理されている資格です。
受講試験を受けるためには、医療福祉系の国家資格を持ち、対人援助に関わる業務を5年以上かつ従事日数が900日以上であること、あるいは、特定の施設などでの相談援助業務に5年以上かつ900日以上従事する必要があります。
介護福祉士
介護福祉士の資格は、介護に関する一定の知識と技術があることを証明する国家資格です。
介護関係の資格には、介護職員初任者研修などさまざまな資格がありますが、国家資格は介護福祉士のみとなっています。
国家試験は、身体的・精神的な問題から日常生活を送ることが難しい人に対して、心身の状況に応じた介護を行うこと、介護に関して適切な指導を行うことができるスキルを問われる内容です。
介護福祉士の試験を受験するためには、以下の4つのルートがあります。
- 養成施設ルート
高等学校などを卒業し、養成施設で指定の年数を修了 - 実務経験ルート
実務経験3年に加え、6ヵ月以上の実務者研修または介護職員基礎研修など所定の研修を受講 - 福祉系高校ルート
高等学校などで福祉に関する所定の科目を履修 - EPAルート
経済連携協定により来日し、3年以上の実務を経験
以上4つのうち、いずれかを満たすと国家試験を受験できます。
資格なし・実務経験を要件としている自治体
生活相談員の資格要件を満たすには、自治体ごとに定められた資格が必要となることが一般的です。
しかし、自治体によっては、無資格でも資格要件を満たせるケースがあります。
4つの自治体を例に挙げ、要件を見ていきましょう。
自治体 | 資格要件 | 自治体サイト |
東京都 | ・特別養護老人ホームで、介護の提供に係る計画の作成を1年以上(勤務日数180日以上)の経験 ・老人福祉施設の施設長経験者 |
通所介護及び短期入所生活介護事業所における 生活相談員の資格要件について |
青森県 | 社会福祉施設などで2年以上介護または相談業務の実務経験 | 生活相談員の資格要件について |
三重県 | 保健・医療・福祉で1年以上の実務経験 | 生活相談員の資格要件の変更について |
川崎市 | 介護保険施設または通所系サービス事業所で常勤として2年以上(勤務日数360日以上)介護業務に従事 | 指定介護老人福祉施設及び指定通所介護事業所における生活相談員の資格要件について |
資格がない場合は、有資格者と同等の知識・技術があるかを確認するために、上記のように一部の自治体では実務経験を要件としています。
無資格・未経験では要件を満たしませんが、福祉関係の実務経験が豊富にある場合、自治体によっては資格がなくてもチャレンジ可能です。
生活相談員をめざすにあたって確認したいこと
これから生活相談員をめざす方のなかには「初めてでもめざせる?」「働いたときの給料はどのくらい?」と思っている方もいるでしょう。
次の見出しから、未経験でも生活相談員をめざせるのか、給料はどのくらいなのかについて解説します。
初めてでもめざせる?
上述のとおり、資格を取得することで未経験でも生活相談員をめざせます。
しかし、資格取得はもちろん、実務経験がない状態からだと難しい可能性もあるでしょう。
介護現場での働き方や、利用者さんやご家族のニーズを引き出す方法、他の施設と連携する方法などは、介護現場で実際に働かないと身につけにくいからです。
未経験の方は、働きながら必要な知識や経験を学ぶことが必要です。
生活相談員の仕事は多岐にわたるため、ルーティン業務はマニュアルを作成し、体系化して理解しましょう。
働いたときの給料はどのくらい?
令和4年の生活相談員の年収は約415万円です。
令和2年が約396万円、令和3年が約406万円だったため、増加傾向にあります。
職場別の詳しい給料を知りたい方は、生活相談員の平均年収・給料の記事をご参照ください。
なお、生活相談員は介護職員の処遇改善加算の対象になりません。
ケアマネジャーになったり、管理職になったりすることで昇給が期待できるでしょう。
「今すぐ給与を上げたい」という方は、高待遇の職場に転職するのも手です。
必要な資格を取得して生活相談員になろう
生活相談員になるために必要な資格について紹介しました。
精神保健福祉士・社会福祉士・社会福祉主事任用資格を条件とするケースが一般的です。
ただし、自治体によって資格要件が異なり、介護福祉士や介護支援専門員を要件に定めるところや、資格がなくても福祉関係の具体的な実務経験があれば要件を満たせるところもあります。
自分が就職したい自治体の要件を事前に確認しましょう。