
医療の現場には多くの医療機器が使われており、それらの医療機器の保守・点検などを行っているのが臨床工学技士です。
臨床工学技士は医療機器の専門家であり、国家資格が必要となります。
医療現場で今後も必要とされる医療職 で、クリニックや病院などの医療機関で活躍できます。
この記事では、臨床工学技士の国家資格の難易度や、臨床工学技士をめざせる学校について解説します。
実際に国家試験に合格した方の勉強スケジュールも紹介しているのでぜひ参考にしてください。
目次
臨床工学技士の難易度
臨床工学技士の資格を取るためには国家試験に合格する必要があります。
はじめに、臨床工学技士の国家試験の難易度や合格率について解説します。
臨床工学技士の国家試験の合格率
2021年に実施された臨床工学技士の国家試験の合格率は84.2% でした。
受験者数は一時期数百人でしたが、ここ10年は2,000人以上の方々 が毎年受験をしています。
2017年からの5年間の受験者数と合格率 は以下のとおりです。
臨床工学技士の国家試験の受験者数と合格率 | |||
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
2017年 | 2,947人 | 2,413人 | 81.9 % |
2018年 | 2,737人 | 2,017人 | 73.7 % |
2019年 | 2,828人 | 2,193人 | 77.5 % |
2020年 | 2,642人 | 2,168人 | 82.1 % |
2021年 | 2,652人 | 2,232人 | 84.2 % |
国家試験の合格率が70〜85%、受験者数は2,500〜2,900人 ですが、卒業時に試験を受ける方だけではなく、すでに学校を卒業している方も含まれています。
卒業時に受ける国家試験の合格率は学校によってさまざまなので、学校別の国家試験の合格率も確認するようにしましょう。
臨床工学技士の受験資格
臨床工学技士の試験を受けるためには、受験資格を満たす必要があります。
決められたカリキュラムを受け、以下のどれかに当てはまる方が受験をすることができるのです。
- 4年間大学で勉強した方
- 3年以上臨床工学技士の学科がある専門学校、専門大学校で勉強した方
- 高等専門学校で5年、さらに1年で卒業できる短期大学や専門学校で勉強した方
- 大学・専門学校2年、さらに1年で卒業できる短期大学や専門学校で勉強した方
- 高等専門学校で4年、さらに2年で卒業できる短期大学や専門学校で勉強した方
- 大学や専門学校で1年、さらに2年で卒業できる短期大学や専門学校で勉強した方
受験資格は、上記のようにさまざまですが、大学では4年、専門学校では3年勉強をした後、国家試験に挑むことになります。
早く資格を取得したいと考えている方は、専門学校などで3年勉強する方法が1番の近道といえるでしょう。
臨床工学技士の受験対策
臨床工学技士は、医療の知識だけではなく機械の専門知識も必要となります。
勉強では難しい漢字が出てくるため、高校生の頃に教科書を読んで内容をまとめる力・文章を読む力をつけておくと、入学後の医学の教科書を読むときにもつまずきにくくなります。
医療系の大学や専門学校へ入学後の勉強内容はガラッと変わるため、1年生の頃から苦手な分野を苦手なままにしないようにしておくと安心です。
臨床工学技士の国家試験は、9科目から午前午後それぞれ90問の計180問 出題され、合格ラインは60%となっています。
勉強方法は、国家試験の過去の問題集を8〜10冊用意して勉強すると、問題の出題傾向がわかるようになります。
国家試験前に模擬試験なども行われているので、それらの試験も受けておくと国家試験にむけて準備もできるでしょう。
また、第2種ME技術実力検定試験や模擬試験を受験するのもおすすめです。
第2種ME技術実力検定試験は、国家試験と出題の傾向が似ているといわれており、模試と合わせて受ける方もいます。
先にこれらを受験し、苦手なポイントを分析したうえで復習すると、効率良く勉強できるでしょう。
臨床工学技士と他の職種で難易度を比較
臨床工学技士の他に、医療の現場に欠かせない方たちがいます。
それは、血液検査や培養をする臨床検査技師、レントゲンやCTなどの検査に携わる放射線技師です。
臨床検査技師も放射線技師も臨床工学技士と同じく国家資格です。
臨床工学技士と他の職種の難易度を見比べてみましょう。
臨床検査技師との難易度比較
医療の資格として、臨床工学技士と名前が似ている臨床検査技師の資格があります。
臨床検査技師の仕事は、血液の検査を始め多岐にわたります。
- 採血
- 血液検査
- 尿検査
- 心電図
- 超音波
臨床検査技師は、血液の検体検査や心電図の生理機能検査などを担当しており、名前が似ていても臨床工学技士と業務内容はまったく異なります。
過去5年間の臨床工学技士と臨床検査技師の国家試験の合格率を見比べてみましょう。
臨床検査技師 | 臨床工学士 | |
2017年(平成29年) | 78.7% | 81.9% |
2018年(平成30年) | 79.3% | 73.7% |
2019年(平成31年) | 75.2% | 77.5% |
2020年(令和2年) | 71.5% | 82.1% |
2021年(令和3年) | 80.2% | 84.2% |
臨床検査技師の国家試験の合格率は70〜80%程度 で、臨床工学技士と比較してそこまで大きな差はありません。
放射線技師との難易度比較
放射線技師は、レントゲン撮影や、画像検査、放射線治療などを担当する職業です。
放射線技師と臨床工学技士の国家試験の合格率を見比べてみましょう。
放射線技師 | 臨床工学士 | |
2017年(平成29年) | 85.4% | 81.9% |
2018年(平成30年) | 75.3% | 73.7% |
2019年(平成31年) | 79.2% | 77.5% |
2020年(令和2年) | 82.3% | 82.1% |
2021年(令和3年) | 74.0% | 84.2% |
放射線技師の国家試験の合格率は70〜85%程度です。
合格率で比較すると、放射線技師も、臨床工学技士・臨床検査技師とあまり大きな差はみられません。
また、過去5年間のデータをみてみると、放射線技師の国家試験受験者数は毎年約3,000人です。
放射線技師の国家試験の受験者数 | |
2017年 | 2,939人 |
2018年 | 2,971人 |
2019年 | 3,202人 |
2020年 | 2,914人 |
2021年 | 2,953人 |
臨床工学技士の受験者数は2,600人〜2,900人 程度だったため、放射線技師のほうが若干多い傾向にあります。
臨床工学技士を目指せる学校の偏差値
臨床工学技士をめざすにあたり、大学や短期大学、専門学校のどこを選ぼうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
臨床工学技士を目指せる大学と短期大学は全国にあり、それぞれ偏差値や合格率も異なります。
偏差値の目安と、学校別の偏差値・合格率は以下のとおりです。
偏差値の目安値
臨床工学技士のコースや学科がある学校の偏差値を見てみると、私立大学の偏差値は35〜54 程度となっています。
そこまで高いわけではなく、入学のハードルは低めです。
なお、この数値は代表的な 予備校の平均値となるため、あくまでも目安です。
【学校別】臨床工学技士の偏差値を紹介
臨床工学技士を目指せる大学の偏差値の参考として、一部の大学を紹介いたします。
大学名 | 偏差値 | 学部・学科・専攻 |
公立小松大学 | 54 | 保健医療学部 臨床工学科 |
帝京科学大学 | 49 | 生命環境学部 生命科学科 臨床工学コース |
偏差値は、学校により45~55程度と差があります。
大学ごとの偏差値については以下の記事で詳しく紹介しているのでご参考ください。
臨床工学技士は医療を通じて人助けや社会貢献ができる仕事
医療の知識を持ち、医療機器のスペシャリストとして活躍できる臨床工学技士は、医療現場に欠かせない存在です。
今後機械の自動化が進んでも、医療機器の操作や点検、修理は必要となるため、需要は十分見込めるでしょう。
臨床工学技士というと難しいイメージを持つ方もいるかもしれませんが、今回紹介したように、試験合格率は70〜85%であり、難易度は決して高くはありません。
しっかりと勉強すれば十分めざせる職業なので、今後就職を検討中の方は、まずは自分に合った大学を選ぶところから始めてみましょう。