視能訓練士資格が取れる大学や専門学校への進学を考えるうえで、資格取得後に就職できるのかは重要な判断基準です。
今回は視能訓練士の将来性を、過去の受験者数や求人の傾向などのデータをもとに解説します。
視能訓練士の仕事で求められることと、仕事のやりがいも説明するので、自分に向いている職業なのかもわかります。
視能訓練士をめざしている人は参考にご覧ください。
目次
視能訓練士の需要は増えている?将来性について
インターネットやスマートフォンの普及による視力低下や、加齢にともなう眼疾患の増加で、眼科医療の需要は増えています。
近視はメガネをかければ解決すると思われていますが、治療法はさまざまです。
コンタクトレンズを購入する場合も、定期的な検査が推奨されています。
最近では、レーシックやICL治療などの視力回復治療も普及しており、眼科医療への期待値は高まる一方です。
反面、一般診療所における視聴訓練士の従事者数は過去約20年で約5倍増加していることから、今後さらに資格の人気が高まる可能性もあるでしょう。
出典:医療施設調査 平成29年医療施設(静態・動態)調査 上巻
需要以上に資格取得者が増えれば、需給のバランスが崩れる可能性がないともいいきれません。
ただし、需要も増大すると考えられているため、供給過剰になることがあっても先々のことだと考えられます。
視能訓練士の受験者数が少ない理由
視能訓練士の受験者数は医療系の国家資格で2番目に少なく、他の技師系資格の受験者数と比較してみると違いは歴然です。
令和3年度の技師系国家資格の受験者数は以下のとおりです。
資格 | 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 |
視能訓練士 | 869人 | 842人 | 773人 |
理学療法士 | 13,377人 | 12,685人 | 10,096人 |
作業療法士 | 5,920人 | 5,723人 | 4,608人 |
診療放射線技師 | 3,599人 | 3,245人 | 2,793人 |
臨床検査技師 | 5,331人 | 4,948人 | 3,729人 |
参照:厚生労働省 第52回視能訓練士国家試験の合格発表について、第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について、第74回診療放射線技師国家試験の正答・合格発表の訂正とお詫び、第68回臨床検査技師国家試験の合格発表について
視能訓練士の受験者数が842人に対し、診療放射線技師は3,245人、理学療法士は12,685人の受験者がおり大差が出ています。
ではなぜ視能訓練士の受験者数は少ないのでしょうか。
それは知名度の低さが影響している可能性が考えられます。
視能訓練士の資格は、日本では1971年に誕生しました。
理学療法士と作業療法士は1965年、診療放射線技師は1968年、臨床検査技師は1970年(衛生検査技師法の制定は1958年)のため、比較的新しい資格です。
眼科を受診すればほぼ検査があるため、視能訓練士に接する機会は多いはずですが、検査してくれる人が誰なのかは知らない人も多いでしょう。
視能訓練士の仕事自体が知られていないため、視能訓練士をめざす人が少ないものと考えられます。
なお、視能訓練士の合格率を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
視能訓練士の求人が増えていない理由
視能訓練士は、働く場所や雇用形態を選ばなければ、求人は多くあります。
ただし、条件を絞ってしまうと求人件数は思いのほか少ないのが実情です。
フルタイムの求人が少ない理由は、眼科検査が業務独占でないことと関係しています。
視能訓練士の仕事内容は、診療の補助として眼科検査を行うことです。
しかし医師はもちろん、診療の補助として看護師が検査することも可能です。
そのため地方のクリニックでは、人件費削減のため視能訓練士を雇わず経営するケースも少なくありません。
午前中は入院患者の定期検査があっても、午後は手術が入るため検査がないといった病院もあります。
そういった場合は、最低限の正社員と午前中だけ働いてくれるパート・アルバイトを採用していることも少なくありません。
結果として、首都圏のクリニックでの求人はある程度あるものの、地方や病院での就職は狭き門になっています。
「視能訓練士は就職難だからやめとけ」といわれる理由の一つは、このような現実があるからです。
専門の機械を扱える視能訓練士の需要が高まるのはこれから
現在はあまり知名度が高くないうえ、専門性を確立できていないため、「眼科検査=視能訓練士」というイメージはまだ普及していないかもしれません。
法律上は医師や看護師にもできることでも、例えば理学療法士の仕事は専門性が高く「その職の人しかできない」ものと考えられています。
視能訓練士はまだ同等の地位を築けていません。
しかし、医療の発展とともに、AIや人工知能による検査の簡易化が進む一方、今後新たな検査機器が増えるにつれ、検査が複雑化することが予想されます。
その際に医師が必要とするデータを、正確に素早く測定できる視能訓練士の需要は高まっていくでしょう。
現在でも有効求人倍率は2.77と悪くない状況ですが、眼科医療の需要の高まりと、視能訓練士の専門性の確立により、さらに需要が高まると考えられます。
視能訓練士の必要性とは?
視能訓練士は、眼科受診される患者さんの検査のほか、患者さんの訓練指導も行うため、眼科に関わるさまざまな場面で必要とされています。
眼科検査と訓練は視能訓練士の専門分野であり、極めていくことでより専門性を発揮できるでしょう。
どのような場面で視能訓練が必要とされるのか、事例を交えながら紹介します。
患者さんの検査を一任できる
担当の医師にもよりますが、視能訓練士は患者さんの検査を一通り任されます。
救命救急センターのある総合病院では、眼科検査は視能訓練士に任されている仕事です。
もし夜間に緊急オペがあれば、緊急で出動し検査します。
クリニックでも来院する患者さんの症状により、検査全体を一任されることも多くあります。
医師や看護師に代わって検査業務を担当できる視能訓練士は、人手不足に陥りがちな医療業界でも重要な役割を果たすといえるでしょう。
患者さんの指導も任せられる
視能訓練士は眼科検査だけでなく、患者さんを指導する機会もあります。
たとえば、メガネでは視力が十分に出ない弱視・斜視患者の矯正訓練指導もその一つです。
訓練指導は、長い時間をかけてじっくりと行うことも多いものです。
信頼関係を築きながらじっくりと訓練を進めていくことになります。
そうした指導を任せられるのも、医療現場における視能訓練士の必要性の高さを表すでしょう。
将来性のある視能訓練士、今後の業界の動向にも注目
視能訓練士は歴史が浅い資格のため、現在は知名度が低いものの、将来性のある職業です。
眼の症状を訴える人は少なくなく、今後も医療の発展が予想されることから、需要も高まっていくでしょう。
ただし、視能訓練士自身の絶えざる専門性の向上も重要です。
医師から必要とされる視能訓練士になれれば、給料アップも期待できます。
志を持って視能訓練士をめざしましょう。